応挙様式の形成
明和二年(一七六五)筆「雪松図」をみると、応挙はすでにその作品のうちに応挙独自の写実的筆法「付立て」を完成させている。「付立て」とよばれる筆法は、古くから東洋の水墨画技法のうちにあった「没骨法」(形を描くのに輪郭線を用いないで、直接墨面のひろがりとその濃淡によって表現する技法)をさらに進めて、巧みな筆さばきのうちに墨色の濃淡をあらわし、写実的な明暗効果を加える筆法である。筆に水をふくませて平皿の上でよくととのえ、さらにその穂先に濃墨をつけてひと息に花や葉あるいは枝や幹を描くとその筆あとには墨色がとけ合ってごく自然な明暗効果が生まれ る。さらにそれらが乾ききらないうちに適宜に筆を加え、調子がととのえられる。